・第3回 表面張力は存在するか?
前回,カーフから水がわき出す計算を行ったところ,液体が粒になる現象が見られた.これは表面張力の存在を示唆するものであるが,モデルには表面張力は考慮されていないはずである.まず,本当に表面張力があるのか,以下のような簡単なケースを使って試してみた.
解析領域 | 0.01×0.01[m](二次元) |
メッシュ | 20×20 |
Light fluid(気体) | 空気(@20℃) |
Heavy fluid(液体) | 水(@20℃) |
境界条件 | 全面対称境界 |
重力 | -z,9.8m/s^2 |
キャピラリ(灰色のオブジェクト) | アルミニウム |
液体(水色のオブジェクト) | 初期条件として設定 |
t=0で,上の状態で出発すると,表面張力によってキャピラリ近傍では液面が上昇するはずである.さて,結果は如何に.
計算結果はごらんの通り.全く,表面張力に相当する現象は見られない.
続いて,下のようなケースを試してみた.今度は,無重力状態では液体が自然に最も表面積の小さい球形になるという,よく知られた現象を再現するのが目的.知らなかった人は,NASDAのページでも見て勉強しよう.
解析領域 | 0.01×0.01[m](二次元) |
メッシュ | 20×20 |
Light fluid(気体) | 空気(@20℃) |
Heavy fluid(液体) | 水(@20℃) |
境界条件 | 全面対称境界 |
重力 | なし |
液体(水色のオブジェクト) | 初期条件として設定 |
結果は,ご覧のように液体は四角いままだった.しかし,縁の形が初期条件に比べてなまっている.これは,SEM法では気体と液体の境界を表す変数SURNも積分されるため連続の式を満たす必要があり,このとき「微分不可能」を避けるためにd[SURN]/dy
(or dz) を有限の大きさにする必要があるためだ.すなわち,SEM法においては,t>0において,液体ははっきりした矩形の境界をもった形状を保つことが出来ない.これが,「液体は最小の表面積を持とうとする」表面張力の作用を擬似的に生じさせたのではないかと推測される.
下の図は,遊びで作ってみたもので,第2回のようにカーフから液体がしみ出すケースであるが,系の大きさ,メッシュを変更してより疑似表面張力が強く出るように調整したものである.液体がカーフからぽたぽたと垂れる様子が見える.が,すぐ下で液滴が静止してしまうのはなぜだろう.いずれにしても,正しい物理現象を反映していないことは間違いない.
q1ファイル
計算結果
・まとめ
03/09/05追記 この回は,Ver. 3.5 single node版による追試験は行っていない.