・開放系の流出境界条件
今回は,「開放系」の流出境界条件について考えてみよう.開放系とは,系の6面全てが流出境界となるような系である.実際には対称性から流出境界が5面で済む場合も多いと思う.具体的には本研究室で行っているレーザー切断の様な系だ.
このような系では,領域の端は全て「流出境界」面としなければいけない.さもないと,そこには仮想のスリップ壁が置かれたのと同じ計算となってしまい,意図したとおりの結果が得られない.ここで問題になるのが境界条件だ.ダクトの流れの様な内部流れの場合,流出境界におけるおよその流速(の3成分)はわかっており,それを境界条件として与えることが出来る.しかし,開放系の場合,ガスがどの面からどれくらい流出するかはアプリオリには決定できない.それを決めるのが計算の目的の一つなのだから.
一方,Phoenicsが流出境界において与えうるのは,面全体にわたって圧力,温度,流速などの物理量を
かのどちらかだ(In-formで複雑な流出境界を設定することもできるがそれは今回の話題とは直接は関係ない).一見,全ての境界条件をIn-cellとすれば,系の内,外で矛盾が起こらないので好ましいように思われるがそうでもないことが以下の実験からわかる.
・今回使用したテストケース
解析領域 | 0.005×0.002×0.004[m] |
メッシュ | 40×40×40,等間隔 |
流体 | 窒素.理想気体近似,圧縮性. |
境界条件 | 手前と上を除く全面流出境界 |
スラブ(白) | 断熱個体 |
上ガス流入量 | -20.0[m/s] |
計算は,レーザー切断ノズルとスラブからなる系を簡略化したもの.上から流入するガスをC1でマークした.
・流出境界のバリエーション
流出境界は,下の図のように,この計算では
を規定する.
圧力だけは絶対値で指定する必要があるが,あとの物理量は「In-cell」か,具体的な数値かを選ぶことが出来る.Coefficientの意味は,マニュアルの記述を一般的な日本語に翻訳すると,「系の中の値と,系の外に規定された値が食い違うとき,どれだけ中の状態を外にあわせようとがんばるか」という係数である.Phoenicsのかつてのバージョンではこの値は1,000で固定だったそうだが,Ver. 3あたりからユーザーが規定可能な変数になったと聞く.Ooefficientについての詳しい情報はここ.
・4つの計算結果を比較
ここで,4面の流出境界の条件が以下のように異なる4ケースの計算を行い,結果を比較する.
Case | Coefficient | 流出境界条件 | q1 |
0 | 1,000 | In-cell | q1_0.zip へのリンク |
1 | 1,000 | 0 | q1_1.zip へのリンク |
2 | 1 | 0 | q1_2.zip へのリンク |
3 | 1 | In-cell | q1_3.zip へのリンク |
ここで,流出境界条件の「0」とは,圧力0,流速0,温度は常温の25℃,C1=0と規定した条件である.圧力は,Phoenicsの仕様によりIn-cellのケースでも0.0固定,乱流境界条件は全てのケースでIn-cellとした.
以下の画像は結果の比較である.全ての画像が上から順番にCase0,1,2,,3の結果を表す.
GXMONI
圧力
流速
C1
・計算結果からわかること
ここから,以下のような結論が導かれる.
・まとめ