関数電卓コラム
07/09/21 [(-)]キーと[-]キー(大きい数と小さい数の入力について)
東海大学の理学部,工学部の1年生の授業で「
を入力して」と言うと,彼らの95%は以下のように打鍵する.
[1][.][5][×][1][0][^][-][6] または [1][.][5][×][2ndF][10^x][-][6]
マニュアルくらい読みなさいよ,君たち.正しくは
[1][.][5][EXP][+/-][6]
だ.ここで,電卓によっては[EXP]キーが[x10n],[+/-]キーが[(-)]と表記されいる.代表的な二機種の写真を以下に示す.
ここで,私が驚いたのは,10のマイナス6乗を入力するとき,[+/-]キーでなく[-](減算キー)を入力しても正しくそれが認識される,ということだ.そこで,早速調査してみた.すると,電卓によってレスポンスが異なることに気づく.
入力:[1][.][5][EXP][-][6]←あえて減算キーを押している
標準入力電卓すべて | 1.5と認識される.つまり「1.5-6」と入力したのと同じ. |
CASIO fx-991s(VPAM方式) | 1.5と認識される.つまり「1.5-6」と入力したのと同じ. |
CASIO fx-4800P | ![]() |
CASIOのSVPAM機 fx-991MSなど |
![]() |
CASIOのNatural Input機 fx-912ES |
![]() |
SHARPの「数式通り」モデル | 1.5と認識される.つまり「1.5-6」と入力したのと同じ. |
Canon F-720i(旧世代機) | Syntax Error |
Canon F-715S(新世代機) | ![]() |
HP 35s | Syntax Error |
さて,どの動作が一番正しいか.私なりに判断を下そう.これは,「Syntax
Error」になるのが最も正しい.何故か.まず1.5と認識するのは論外,というのはおわかりだろう.ではなぜ正しくと認識するのが問題なのか.実は,全てのシチュエーションにおいて[-]キーが[+/-]キーを兼ねることが出来ないため,両者の役割が違うことを明示的にユーザーに示す必要があるためである.これが,先日のコラムで[ALPHA]キーは不必要としたのと異なる.
例えば,ラストアンサーを負にしたものを数式の始めに使いたいとしよう.正しいキーインは
[+/-][Ans]
であるが,ラストアンサーの機能上,始めに[-]キーを押すと指示は「Ans-」となる.もちろん,これは論理的に正しく,こういう動作が期待されることもあるので[-]キーが[+/-]キーを原理的に兼ねられないことがわかるだろう.
ということで,今回の勝負はHPのRPN電卓とCanonの旧世代機に軍配が上がった.関心させられるのは,HPの哲学だ.省略できる入力は省略可能にし(※),あいまいな入力はきっぱり拒否する.人類を月に送った電卓は志が違う,ということだろう.
※HPの電卓で分数を打つときには,たとえば1/2なら[.][1][.][2]とすればよい.置数に小数点が二回出てくることがない,というルールを巧みに応用した省略法だ.