東海大学理学部 遠藤研究室

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2023/04/25 Optics ExpressにDPALの研究成果が掲載される



科研費(C)「半導体励起アルカリレーザーの失活反応断面積測定およびシミュレーション」が23年の春に無事終了.今回受けた補助金の目的は,

  • DPALの基本反応である,メタン,エタン,プロパンとCs原子の衝突混合反応断面積,衝突失活反応断面積を直接計測
  • 計測結果の正しさを,数値シミュレーションとレーザー発振実験の比較により実証

というものだったが,目的を完全に達成して終了.Optics Expressに2本の論文を掲載するという,科研費(C)としては出来過ぎの成果を得た.特に,最近公刊された "Analytical model of a diode-pumped cesium laser for investigation of upper-state mixing and quenching reactions" は,単に数値シミュレーションと実験結果の一致を得たのみでなく,Cs DPALの支配方程式に,限定された条件では解析解が存在することを導き,実験結果がその解析解でよく説明可能であることを示した(上のグラフのオレンジの線).

研究とは一般に,計画をして,提案をして,お金をもらい,成果を報告して終わるのだが,最後に計画通りの成果が報告できる研究なんてほとんどない.そういう意味では,今回の科研費(C)は自分のキャリアの中でも1,2を争う「計画通り」の研究と言える.しかし,本当にすごいのは,やはり「計画にはなかった成果が出た」研究だろう.

スポンサーがそれをわかってくれていて,研究内容に口を出さないときに,えてして予想外の結果が出る.一方,スポンサーが成果を縛り,途中で細かいチェックを入れてくるような研究では,どう頑張っても目標の50~80%の成果しか出ない場合が多い.最近,日本の研究の衰退が取りざたされているが,原因の一つに,この「おおらかさ」が失われたことがあるのではないだろうか.