電磁気学特論(SPM)
2007年 | 2008年 | 2009年 |
レポート課題1 出題 05/22 〆切 06/05
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図のように,屈折率1.33の水中から水面に向かって照射されたp偏光の反射率について考える.角度θiを0から90度までとり,以下の量をグラフに表しなさい.
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講評:みんな,とても良くやってくれた.しかし,難しく考えすぎだなあ.雛形には透過角θtが与えられているからこんな風にグラフ化するだけで良かった.実は,ここからこのグラフの物理的な意味を考えてもらうのが今回の課題の目的.各自,考えてみよう.
レポート課題2 出題 06/26 〆切 07/10
- 下図のように,一定の時間間隔 T で並んだ,持続時間τの非常に短いパルス列がある.このパルス列は,フーリエ変換すると等周波数間隔で並んだ線スペクトル列,言い方を変えると,等間隔のΔωを持つ正弦波の和で表されることを示しなさい.厳密な証明でなくても,どのような手段を用いても良い.また,このとき,T ,τはスペクトルの存在範囲Ω,スペクトル間隔Δωとどのような関係にあるか.
- レーザー光でこのようなパルス列,すなわち線スペクトル列を作る技術を「光周波数コム」と呼び,様々な応用が考えられている.では光周波数コムには一体どのような使い道があるのか.調査して報告しなさい.
講評:まず,どのような方法で上に述べられた性質を確かめるか.多くの諸君がMathematicaを使って実際に正弦波を合成して,Ωとτ,ΔωとTの関係を確かめていた.中でもその手法,得られた結果が鮮やかなのがこちら.とても上手く使いこなしている.
問にあるような「連続パルス列のスペクトル」は,フーリエ変換の教科書なら必ず載っている有名な問題だ.厳密な証明は専門書にゆずるとして,ここは定性的に考えよう.周期Tでくり返す任意の関数があるとする.
関数がどんな形をしていても,これはsinとcosの和で右式のように表される,というのがフーリエ級数展開の原理だ.ここで,図から明らかにω1T=2π,ω2T=4π...となり,結局横軸をω,縦軸をan,bnとしてグラフを描くと以下のようになる.これで,2π/Δω=Tが示された.
次に,任意の波形をsin,cosで再現しようとするときに,何次のωnまでが必要か,というのが問題.これは有名な「標本化定理」というものがあって,「角周波数Ωの現象を時間間隔τのパルスで再現しようとするとき,最低τ<π/Ωで無くてはいけない」,というものだ.これを逆に使えば,時間間隔τ程度の現象は,角周波数Ω=π/τ程度の正弦波で再現できる,ということになる.定性的には,ある孤立パルスを正弦波の和で表そうとするなら,少なくともΩτ=πくらいの角周波数を持つ正弦波(時間間隔τでゼロから最大~ゼロに戻る)の成分がないといけない,という直感で理解できるだろう.
いま,パルスが更に高い角周波数ω0の正弦波(キャリア)を変調した,下のような波形だとする.
この場合,第一の原理は変わらず2π/Δω=Tなのだが,an,bnが現れる位置が変わる.詳しい議論は省略するが,an,bnが値を持つのは,キャリアの角周波数ω0を中心に±π/τの範囲となる.
光コムに関しては,2005年のノーベル物理学賞の受賞対象となったこともあり,最近では知名度も高い.周波数コムのブレークスルーとなったのは,Ωが1オクターブを越えることになり,自分自身の第二次高調波との間で「うなり」が観測できるようになったことから光周波数の絶対測定への道が開けたことだ.そこから新しい周波数標準への応用を始め,様々な応用が考えられているが,詳しくはネットで調べればたくさん出てくる.レポート解答ではそれぞれユニークな応用を探し出して報告してくれた.