電磁気学特論(SPM)

2016年 2017年 2018年

レポート課題1 出題 05/18 〆切 05/25

Q1:スカラポテンシャル\(\phi\)とベクトルポテンシャル$\vA$が与えられているとき,電場と磁場は以下の式から求められる.

\begin{align} \vE &= -\Bib{\vA}{t}-\Grad \phi\\ \vB &= \Rot \vA \end{align}

ここで,任意のスカラ場$U$を仮定する.$\phi$および$\vA$に,$U$の微分を以下のように加えても,電場と磁場は変わらないことを示せ.

\begin{align} \label{Q1-1} \phi' &= \phi-\Bib{U}{t}\\ \label{Q1-2} \vA' &= \vA+\Grad U \end{align}

Q2:$\phi$,$\vA$が与えられたとき,$U$として,以下の性質を持つスカラ場を考える.

\begin{align} \nabla^2 U- \epsilon_0 \mu_0 \Bib{^2 U}{t^2} =-\Div \vA-\epsilon_0 \mu_0 \Bib{ \phi}{t} \end{align}

この$U$の微分を式(\ref{Q1-1}),式(\ref{Q1-2})の様に加えたポテンシャルを$\phi'$,$\vA'$とする.このとき,以下の恒等式が成り立つことを示せ.

\begin{align} \label{Q1-3} \Div \vA'+\epsilon_0 \mu_0 \Bib{\phi'}{t} = 0 \end{align}

Q3:$\phi'$,$\vA'$は,当然以下のマクスウェル方程式の解である.

\begin{align} \label{Q1-4} \left( \nabla^2 - \epsilon_0 \mu_0 \Bib{^2}{t^2}\right)\vA' -\nabla\left( \nabla \vA'+ \epsilon_0 \mu_0 \Bib{\phi'}{t} \right) &= -\mu_0 \vJ \end{align}

このとき,式(\ref{Q1-3})の関係があれば,式(\ref{Q1-4})は以下の形に書け直せることを示せ.

\begin{align} \label{Q1-5} \nabla^2 \vA'- \epsilon_0 \mu_0 \Bib{^2}{t^2}\vA' -\mu_0 \vJ \end{align}

Q4:原点に$z$方向を向いた双極子モーメント$p$の電気双極子があり,角振動数$\omega$で調和振動しているとする.この電気双極子が作るベクトルポテンシャルは

\begin{align} \vA'=\frac{\mu_0}{4\pi r}i\omega p \exp[i(\omega t-kr)]\vk \end{align}

($\vk$は$z$方向の単位ベクトル)と表せることが知られている.このとき,全空間の磁場はどのような分布になるか答えよ.

Q5:Q4の解は「真空中を伝搬する電磁波」の形の一つである.したがって,「電場と磁場は直交,大きさの比が特性インピーダンス」という性質が成り立つ.これを利用して全空間の電場はどのような分布になるか答えよ.

ただし,この考え方は,電気双極子から充分離れたところでしか通用しないので注意のこと.

 

レポート課題2 出題 07/06 〆切 07/20

図のような矩形導波路を伝搬する電磁波のモードを,マクスウェル方程式から導出する.以下の問に答えよ.

Q1: 題意から,我々が想定する解の形は,電場が

\begin{align} \vE(x,y, z, t)=\vE(x,y) \exp (\omega t-\beta z) \end{align}

の形をしていることは明らかである.ここで\(\omega\)は考えている電磁波の角周波数,\(\beta\)は電磁波が管内で持つ波数である. マクスウェル方程式,\(\displaystyle \nabla^2 \vE =\epsilon_0 \mu_0 \Bib{^2\vE}{t^2}\)に解を代入,デカルト座標で成分表示しなさい.

Q2: 解くべき変数は\(\vE\),\(\vH\)のそれぞれ3成分で計6個だが,マクスウェル方程式の関係から,\(E_z\)と\(H_z\)がわかれば 残りの成分は求められる.例として,\(E_z\)と\(H_z\)から\(E_x\)を求める式を,マクスウェル方程式から出発して導出しなさい.

Q3: 更に,\(E_z\)=0を仮定すれば,我々が求めるべきは「\(H_Z\)が従うべきスカラ2階偏微分方程式」である.ここで,解を\(X(x)Y(y)\exp (\omega t-\beta z)\) と仮定する.\(X(x)\),\(Y(y)\)はそれぞれ\(x\),\(y\)を独立変数とする任意の関数である. 乱暴なようだが,結果的にこれは正しいことが示される.このとき,微分方程式が\(x\),\(y\)を独立変数とする2つの常微分方程式になることを示しなさい.

Q4: Q3で求められた常微分方程式を解けば,\(X(x)=C_1\cos(k_x x+C_2)\),\(Y(y)=C_3\cos(k_y y+C_4)\)を得る.ここで,\(C_1...C_4\)は任意の 定数,\(k_x^2+k_y^2=\epsilon_0 \mu_0 \omega^2 -\beta^2\)である.\(C_1...C_4\)を決めるため,管壁における境界条件を定めたい. \(x=0,a\),\(y=0,b\)における,\(H_z\)が従うべき条件を示しなさい.

Q5: \(C_1...C_4\)を定め,導波路を伝搬するTEモード(\(E_z=0)\)を求めなさい.ただし,求めるのは\(\vE(x, y)\)のみでよい.ここで,Q4の境界条件からは全ての任意定数は定まらないことに注意すること.