円筒スラブ型拡散冷却CO2レーザー
2004/10/31
円筒型スラブレーザーと呼ばれるレーザーがある.二つのセラミック円筒をごく近い間隔で同心円状に配置して,その間隙で放電を飛ばす,炭酸ガスレーザーの一種だ.
ところが,この構成でビーム品質の良いレーザー光を取り出そうとすると一苦労.理由は専門的になるが,円筒形の共振器はazimuthal方向のモード弁別が共振器の損失のコントロールではできないためだ.そこで,ビームを一度折り返して中から取り出すW-axicon型共振器を考えた人がいる.
しかし,この共振器,一つ問題がある.内側のスラブと外側のスラブを等間隔に保つために,何らかの構造を設けなければならないが,W-axiconを使うと,スラブを内側から支えることができない.どうしても,共振器の中に柱(strut)をたてなければならない.しかし,この柱が共振器のモードを悪化させる.
これを,W-axicon共振器の設計上の工夫によって,柱が存在してもビーム品質が悪くならないようにしたのがこの研究.共振器のパラメータを変更するたびにいちいち試作品を作っていたのではお金がいくらあっても足りない.そこで,共振器の形状を変えたらどのようなビームが取り出せるかを予想するために,数値シミュレーションを利用した.
その結果,柱が存在しても,中央に強度のピークがある同心円に近いビームが取り出せる解があることを示すことができた.
結果をまとめて論文を書いたが(下記),論文の図がこの論文誌の表紙を飾ることになった.名誉なことである.
M. Endo, S. Yamaguchi, T. Uchiyama, and T. Fujioka, “Numerical Simulation of the W-Axicon type Optical Resonator for Coaxial Slab CO2 Lasers”, J. Phys. D 34 (2001), pp. 68-77.