マグネシウムのレーザー切断

2005/01/04

研究の背景

マグネシウム合金は,その軽さ,リサイクルの容易さからアルミ合金に代わって様々なところで使われ始めている.当然,孔をあけたり切断したりという加工が必要になる訳だが,他の金属では非常に有用であるレーザー切断が従来の技術では全く利用できない.なぜなら,マグネシウムはもともとフラッシュランプとして使われていることから(たとえばプリントゴッコのランプ)わかるように,大変燃えやすいためである.これを,熱加工であるレーザーでいかにして上手に切るかというところが工夫のしどころである.

普通のレーザー加工機(CO2レーザー,出力1kW)で切ると,下の写真のように切り口がケバケバになり,実用的ではない.

01.jpg

実は,うまい切り方を思いついた.

212.jpg

結果をまとめて,応用物理学会で発表した.


加工のメカニズムを追求するために,数値シミュレーションを作成中.下の図は,テスト用に作ったお遊びプログラムの実行結果.まだまだ,道は遠い.

Temp.gif

 レーザー加工には主に

  1. 加熱による相変化
  2. 流体力学に基づく液体,気体の輸送

に支配される現象で,これを全てモデル化するのは相当困難である.たとえば,東工大の矢部先生の研究を参照.同じ事をやるのはとても無理なので,まずは(2)の流体力学だけを市販CFDソフトのPhoenicsで計算することにした.言い換えれば,「市販ソフトでどこまで意味のあるレーザー加工シミュレーションができるか」というのが私の挑戦.

まあまあ意味のある結果が得られたのでレーザー学会で発表.

 

解いた問題は非常に単純だが,液体金属の物性を変えてやるだけで,液滴がどちらに飛んで行くかが異なることを示すことが出来た.すなわち,下ガスによるドロスフリー切断のキーは液体金属の物性にかかわらずその動きを強制することがポイントと言える.計算の詳しい説明はこちら