関数電卓マニアの部屋

CASIO fx-JP500CW

拡大拡大

メーカー CASIO 23/09/30初出
型式 fx-JP500CW  
実売価格 \4,040 Amazon.com
入力方式 自然表示  
角度モード × [SETTINGS][OK][↓][OK][↑↓][OK][AC]
[F<->E]キー × [FORMAT][↓][↓][↓][OK]
※Eng表示中は他のキーが効かない
メモリSTO × [→x][↑↓→←][OK][OK]
メモリRCL [SHIFT][A-F,X,Y,Z](CASIO方式)
√キー独立  
x^2キー独立  
1/xキー独立 ×  
BSキー  
2023年現在,「関数電卓」はスマホアプリに押されて風前の灯である.Canonは事実上の撤退,SHARPの最新モデルEL-509Tは登場が2016年で,fx-JP500より後発にも関わらず一世代古い技術を採用している.

そんな中,CASIOから9年ぶりに新製品が登場した.4諧調の液晶ディスプレイ,処理能力向上,UIの大幅刷新と,見どころは多い.大きな期待をもって迎えたが,期待はすぐに落胆に変わった.

UI変更のキモは「初心者にもわかりやすく」だ.そのため,開発者は多くの機能を整理・階層化して,矢印キーと日本語の表示で選べば誰でも必要な機能を呼び出せるようにした.しかし,ショートカットがないので,簡単な機能でも多くの打鍵を必要とする.すなわち私が掲げた「基本機能は表側」の逆を行くコンセプトとなる.上の表の範囲では,たとえば角度モードのセットに7回の打鍵が必要となるとか,代入するメモリーを指定する際に[↑][↓][→][←]キーで選ぶしか方法がないとか,Eng表示中は解除まで他のキーが一切効かないとか,枚挙に暇がない.

機能設定後,[AC]を押さないと機能設定モードから抜けられないのも謎仕様.もちろん,設計者の意図(?)通り,[戻る]キー連打で第一階層まで戻っても良いのだが...

写真を見てもわかるように,[ln][log]の裏にある.また[10x][ex]に相当する機能キーがない.マニュアルを通読したが,「指数関数」に相当する記述が全くないのに驚いた.

更に,これが決定的に問題なのだが,[x10x]の乗算記号の優先順位が掛け算と同じになった.数学的に厳密なことを言えば正しいのだろうが,関数電卓の表記としては「間違い」と言ってよい.例えば,
\begin{eqnarray} 1/k_{\rm B}\;\;\; (k_{\rm B}=1.38\times 10^{-23}) \end{eqnarray}を計算するとき,普通なら

1 [÷] 1.38 [x10x] [(-)] 23 [=]

と打つところだが([(-)]キーが無いのは置いておくとして),これだと意図した答えにならない.

なぜならfx-JP500CWはこの入力を
\begin{eqnarray} \frac{1}{1.38}\times 10^{-23} \end{eqnarray}と解釈するためである.これを防ぐには分数を使うか,$1.38\times 10^{-23}$を括弧で囲むしかない. 試しに1文字ずつ消してみれば,設計意図が良くわかる.fx-JP500CWは,上の入力の指数 部分を[×],10,[10x][-],23に分解して置数エリアに置いている.すなわち[10x] [ex]も含め,すべての指数表現が統一されたのである!(ドヤァ)

私は,このルールを関数電卓の標準にしようと考えるCASIOの目論見を強く危惧する.

関数電卓の[x10x]は「10のn乗」ではなく,浮動小数点表記の仮数と指数を区切る記号で,これらは最も強い結合でなくてはならないというのが私の主張だ.CASIOの古い機種,SHARPの現行機種ではこの区切りは「E」と表記されるが,これが正しい.


まとめよう.大学で物理,化学,工学を学ぶ学生にこの電卓は勧めない.少なくとも,自分が指導する学生には,もっと強く「買うべきでない」と言うだろう.

CASIOもその辺はわかっているようで,下記サイトで標準的な理工学部の学生のニーズをたどっていくと,「fx-375ESを使いましょう」となる.

関数電卓選び方ガイド

せめて,fx-JP500がディスコンにならないことを祈る.