電磁気学特論(SPM)

2005年 2006年 2007年

レポート課題1 出題 04/20 〆切 04/27

図のように,導電率$k$,半径$a$の導体棒にそって一様な電流密度${\mbox{\boldmath$i$}}$の電流が流れている.
1.このとき,棒内部のPoyntingベクトルの様子を図示しなさい.

2. Poyntingベクトルの向きからどのような物理的洞察が得られるか.


解答はこのページ の解答用紙を印刷して使用し,表紙はつけないこと.

解答用紙(Word)

解答用紙(PDF)




※大きさをきちんと計算できれば大変良い.

講評:

  • Poyntingベクトルを,棒全体にわたって「分布」で示した解答は半分程度にとどまりました.Poyntingベクトルの大きさが中心に向かうにつれ減少していく様子が大切です.
  • 成績の良い人ほど,電場E,磁場Hの計算に複雑な考え方をする傾向が見られました.簡単に考えられるものは,簡単に考えよう.電場についてはi=kEという法則があるので,直ちにE=i/kとなり,磁場については系の対称性から,棒中心から半径rの円でAmpereの法則を適用すれば一発です.
  • 棒の外側のPoyntingベクトルを正しく言い当てた人はいませんでした.棒の外側の電場は0ではなく,内部と同じ大きさで存在します.棒の外側の任意の点から棒に向かってまっすぐ電荷を動かすのに仕事がいらない,ということは等電位面は棒に垂直.したがって電場は棒に平行となります.
  • 模範解答:Poyntingベクトルの描写,電場Eと磁場Hの計算方法,物理的洞察,1枚にまとめた力量など,完璧と言って良いでしょう.

レポート課題2 出題 05/18 〆切 05/25

まず,自分の出席番号の下4桁を用いて屈折率$n$を決定する.

$n$=1.6+ $\left\{\right.$[1000の位]+[100の位]+[10の位]+[1の位] $\left.\right\}$ の1の位$\times$ 0.1

例:1111 $\longrightarrow$$n=2.0$
例:1234 $\longrightarrow$$n=1.6$

以下のQ1,Q2のうちいずれかに解答しなさい.実力とやる気のある人はQ2を選ぼう.

Q1: 真空から屈折率$n$の誘電体に角度30${^\circ}$でTE波の光が入射した.このとき, 波の(1)電場反射率$r_{TE}$ (2)電場透過率$t_{TE}$ (3)強度反射率$R_{TE}$  (4)強度透過率$T_{TE}$ を計算しなさい.強度反射率$R$,強度透過率$T$は,教科書の式 (1.49)の性質より$R=r^2$と定義でき,$T$はエネルギー保存則より$T=1-R$と簡 単に求められる.

Q2: 真空から屈折率$n$の誘電体に対するTE波,TM波の光の(1)電場反射率 (2)強度 反射率を入射角0${^\circ}$から80${^\circ}$の範囲でグラフにしなさい.グラフは電場反射率 を1枚,強度反射率を1枚に描くこと.

講評:

  • 問1と問2の回答者を点数で差別化するため,問1の基準点とA-,問2の基準点をAとしています.
  • 問1で間違えた人が何人かいますが,注意不足ですね.特に,反射率や透過率が1を越えたら『なんか変だな』と思うセンスを持とう.
  • この問題は一度訂正があり,全員に通知しましたが,それに気づかずレポートを書いた人はなぜか計算違いが多い.「性格」だろうか.
  • 棒角度0でFresnelの公式が不定になることに気がつかなかった人は注意が足りません.角度を0に漸近させた人,素直に「分かりません」と書いた人はもう一息.模範解答で正解をチェックしよう.
  • ブリュースタ角で反射が0になることに言及した人が少数ながらいました.こういうレポートに高得点を与えています.
  • 明らかに,単位を取りたいだけの目的で提出された,極めていい加減なレポートを見つけました.こういうレポートはカウントしませんので覚悟するように.
  • 模範解答:このレポートの良い点は二つあります.一つは,角度0において反射率が不定になるのは『物理的におかしい』と看破していること.もうひとつは,グラフを連続した曲線で書いていること.反射率は定義された範囲の任意の角度で値を持つので,Excelを使って◆や■のプロットで書いてきた人は本来なら減点です.

レポート課題3 出題 06/08 〆切 06/15

つぎの各問に答えなさい.もちろん,1問だけの解答も受理する. ※資源節約のため,1枚目の余白に学籍番号,氏名を記入し,表紙はつけないこ と.

Q1: ある種のアルコールはDebye型緩和を示し,可視光では透明な液体である. これをコンデンサーに挟んで直流で計測したときの比誘電率が16,可視光におい て屈折率は2.0であった.

この液体は中間の周波数では複素誘電率を示すが,最も$\tan\delta$が大きいと きのその値,$\epsilon'$$\epsilon''$を求めなさい.

解析計算に自信のない人は図を描いて実測すると良い.

Q2: 教科書p37のデータを参照して,波長620nmの光が金に対して角度45${^\circ}$, TM偏波で入射したときの強度反射率を求めなさい.

※これは,Mathematica等の複素計算ができるソフトを使わないとまず無理.


講評:

  • 今回の問題は予想外に良問だったようで,バラエティに富んだ解答をもらうことが出来ました.採点作業もこういうときは楽しく出来ます.
  • Q1は,電磁気学IIの知識を要求していますが,設問を正しく理解すれば,単に下の図の半円と直線の交点の座標,直線の傾きを求める問題に帰着することが分かるでしょう.ここで,直線の傾き,すなわちtanδを答えていない解答が多数有ったことを指摘します.問題文を良く読むように.
  • さて,問題は高校レベルの幾何の問題ですが,これにはいろいろな考え方があります.ざっと挙げると,

    - グラフ用紙に図を描い,定規で測る.     解答例
    - 三平方の定理を使う.     解答例
    - 円の方程式と直線の方程式の交点の座標を計算する.     解答例
    - tanδをε'の関数で表し,1回微分してその最大値を求める.     解答例
    - tanδをθの関数で表し,1回微分してその最大値を求める.     解答例

    - Excelなどの表計算ソフトでtanδをあらゆるε'で計算し,最大値を探す.     解答例

    なんと,上に挙げた全てのやり方について,誰かしかの解答がありました.もちろん,どれも,答が正しければ正解です.個人的には三平方の定理が一番シンプルで美しい解法だと思うが如何?

  • Q2は,正攻法で解こうとすると複素数を引数に取る逆三角関数,三角関数が出てくるため,普通の関数電卓のレベルで計算できる問題ではありません.そこで,出題時点でMathematicaの使用を推奨しました.Mathematicaを使えば,複素屈折率をそのままSnellの法則に代入して透過角(複素数)を得,それをFresnelの公式に代入するだけで,まあソフトウェアの使い方のテストみたいなものです.しかし,道具は,実際の場面で使って初めてその使い方を理解するものです.いい勉強になったでしょう.
  • 最終的な答が正しければ正しいやり方,間違ったやり方はありません(上手い,下手はある).すべて正解です.中でも比較的良くまとまっている例がこちら
  • しかし,この問題,多少の式変形をすると何とか「複素数の平方根」のレベルまで簡略化することが出来ます.4人の人が,この変形に気がつきました.しかし,1人を除いて,その複素数の平方根をどうやって計算したか明示していません.実は,これを実行するのは結構大変で,

    - 極座標形式で表し,絶対値の平方根を取り偏角を半分にする.その後再び「実部+虚部」形式に戻す.
    - 公式\begin{displaymath}
\sqrt{a\pm ib}=\sqrt{\frac{\sqrt{a^2+b^2}+a}{2}}\pm i\sqrt{\frac{\sqrt{a^2+b^2}-a}{2}}
\end{displaymath}を使う.
    - Mathematicaを使う

    などの方法があり,結局Mathematicaを使うくらいならはじめから使った方がずっとスマート.従って,途中の計算方法を明示した人だけにボーナス点を進呈しています.
  • 匿名希望の「Mathematicaを嫌う者」さんから,こんな解答をもらいました.こういう人は大好きです.

レポート課題4 出題 06/29 〆切 07/13

「フォトニック結晶」というキーワードで最近の学会発表,論文,科学雑誌や新聞記事などから引用し,ニュース形式でまとめなさい.以下の条件を守ること.

  • A41枚にまとめること.
  • 図,写真などを必ず1枚は添付すること.
  • 手書き or ワープロは問わない.

解答例をこちらに示す.

※今回の採点基準は,ニュースとしてまとまっていること(つまり読んで面白い話題であること)に加え,「他の人と異なる記事である」ことを重要視する.従って,皆が気がつかないような話題を探してくることが高得点のポイント.

講評: